みらい在宅医療総合クリニック水戸

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不養生のすゝめ②

 人間の体を守るしくみ(医学的には免疫と言っている)は、複雑で今に至るも分からない事だらけである。
 節制につとめ、体にとって良いと思われることをし、悪いと思われることを一切止めたら長生きできるかというとそうではない。
 フィンランドで、ある免疫学的調査が行われた。かなり多数の人を二つに分け、片方は生活を節制していてサプリメントも飲み健康診断等もきちんと受けるグループ、もう片方は自由気ままな生活をしていて健康診断も受けないグループをつくり、両方のグループを100年間に亘って追跡調査したというものである。結果は、節制したグループは25 ~30%の人が死亡したのに対して、節制をしなかったグループでは一人も死亡しなかったという。
 笑いが絶えないような生活をしている人はストレス が少ないため、人が本来持っている免疫作用が働き、NK(ナチュラルキラー)細胞が、がんの発生を防止しているのだろうと、免疫学の分野ではこの調査を大変重要視しているというこ とであった。 このような内 容の論文は何年か前から学会で発表されているが、がん治療学会サイドからは、あまり注目されていないという。
 がんの治療は別として予防という観点からみると、政府のがん対策というのは予防健診の受診率を高める為、ここぞとばかりマスコミでも、テレビの医療番組などでは病気の恐ろしさや怖さを伝える ” 恐怖番組 ” ばかりである。人類が本来持っている免疫の力を十分に働かせることが、がんを抑制するという免疫学的知見からすれば、むしろ国を挙げてがん患者を増やしているように思える。
 という訳で、健康診断をすれば間違いなく病気が早期発見されるというものではなく、がん等はいくら早く発見しても駄目な場合もある訳で、このような事を理解した上で、健康診断を受けたい人は受けることをお勧めしたい。
 医師の立場としては、健康診断で早期に発見され早期治療をしても、助からなかった場合の対応に、大変困るからであります。

医療法人社団 医宝会
理事長  宝住 与一