酒の効用②
先日読んだ酒にまつわる良い話を紹介する。
江戸時代の学者貝原益軒が1712年、今より300年以上も前に書いた『養生訓』の中で、 ″ 酒は天の美禄なり。少し飲めば陽気を助け、血気(ストレス)を和らげ、食気をめぐらし、愁いを去り、興を発して甚だ人の益あり。多く飲めばまた良く人を害する事、酒に過ぎたる物なし ″ とあり、酒には害と益があることを述べている。酒は半酔に飲めば長生の薬になるともありますが、そのことが科学的に証明されたのは、1990年過ぎてからである。
欧米では、第1の死因である心臓病死がフランスでは他の欧米諸国と比べて少なかった。動脈硬化をきたす乳製品による脂肪の摂取量と心臓死との関係が強いことは知られているが、フランスは他の国に比べ死亡率がずば抜けて小さく、他の国に比べ半分くらいだったようである。
その理由を調べていて出てきたのが赤ワイン説である。フランスでは赤ワインの消費が多いから心臓死が少ないのではと、赤ワインの飲量と乳製品摂取量を比例して比較すると、どの国もよく相対したので、赤ワイン説が有力になった。
しかし、その後の調査でウイスキー、ウォッカ等、他のアルコールでも心臓病を少なくしていることも分かった。
日本人の調査で、死亡率を一番少なくする量が、男性ではエタノール20g、女性ではその半分。その倍量以上だと死亡率は逆に増加してしまう。
そこで、『健康日本21』では飲酒の目標を、一日20g以下とし、第2次の目標は40g/一日以上飲む事を減らすことが目標となった。
実にこの20g~40gというのは、日本酒で1~2合、ビール中ビン1~2本に相当する量で、血中エタノール濃度が0.05~0.1%となり ″ ほろ酔い気分 ″ になる量なのである。「酒は半酔いに飲めば長生の薬となる」という健康指標の的確さに驚かされる。
誤解をしてほしくないのは、ここでいう ″ 半酔いの量 ″ は決して本人の自覚症状に基づくものではない。「自分は酒に強い」と思っている人は3合飲んでも半酔いにならないからともっと飲もうとするかも知れない。実は酒に強い人と思っている人こそ、身体的にアルコール障害を受けやすい傾向があり、酔わないからといって身体的に肝臓が強いという訳ではない。酒に強いと思っている人こそ、節制が必要と思われる。
『花は半開に見、酒は微酔にのむといへるが如くすべし。興に乗じて戒を忘るべからず。』貝原益軒の健康指南術は実に奥が深いのである。…とある。