高齢者の骨折
高齢者の骨折で多いのは、大腿骨頸部骨折、上腕骨頸部骨折、手関節橈骨遠位端骨折の3つです。
転倒して歩けなくなったら、殆ど高齢者は大腿骨頸部骨折です。
転倒して肩が痛い、腕が上がらなくなってしまった時は、殆ど上腕骨頸部骨折の場合が結構多いようです。
手関節を痛がって腫れていて2~3日経過して痛みがとれない場合、手関節の骨折であることが多いです。
高齢者はズレが少ない場合、若い人ほど痛がらないので、2・3日経っても「歩かない」、「腕が上がらない」、「痛い」と言っている場合は要注意です。
この3つの骨折で一番患者さんも、治療する方も困るのは大腿骨頸部骨折です。
他の2つの骨折は、よほどズレがひどい場合以外は、保存的治療(手術しない)で治ります。上腕骨頸部骨折は三角巾で吊っておけば治りますし、手関節の場合は一寸位ズレが酷くても、手で合わせて(徒手矯正して)、シーネ固定をすれば、時間が経てば治ります。
私が医師になった頃は、大腿骨頸部骨折は殆ど全部手術しないと駄目と教えられましたが、現在も本質的には変わっていません。人工関節が一般化する前は、大腿骨頸部のくびれのところの骨折は、大変つきにくく、治療に難渋しました。 高齢者は寝たままで1週間もすると歩けなくなり、元気だった人でも1ヶ月以上も寝たきりでいると、元に戻すのは大変難渋します。だから、すぐ手術して動けるようにするのが原則で、前述のようなことが言われています。何故高齢者は、骨折しやすくなるかと言いますと女は66才、男は16才を過ぎると骨粗鬆症(オステオポローシス)に半分以上の人はなり、骨はもろくなります。骨の中のカルシウム分とタンパク質(膠質)が減りもろくなり、ねばりがなくなります。その上、運動能力の低下で、転倒し易くなり防御の姿勢をとりにくくなります。
また、骨の皮質、外側の部分、堅い所がうすくなるので余計です。その上、上記の3ヶ所、大腿骨頸部(特に大腿骨と股関節の前のふくれた部分)、上腕骨頸部、手関節部分は転倒した持の 衝撃を吸収するために海綿骨が多い場所が骨皮質がうすくなり高齢者だと殆どなくなっている。針で刺すとブスプス骨を簡単に刺せるような状態になって、そのため骨折しやすい訳です。
また、もともと高齢者は他に病気を持っている人が多く、手術は大変ですが、無理してでも手術をしないと少しずつ弱っていき、座して死を待つことになりかねないので大変困ります。
という訳で、高齢者の方は、転倒骨折には十分注意してください。一番の予防は転ばないことです。
転ばない為には、日頃、良く歩くことです。バランスを良くする、また悪くしないのは、歩行が一番です。
また、余計なことですが、歩くことが一番のボケの予防にもなりますし、少しボケている人は、進行を抑えます。というのは、歩行は多くの皆さんが思っている以上に、脳を刺激することになるからです。
注)骨には皮質と髄質とあり、外側の硬い部分を皮質、中央部を髄質といい髄質で血液がつくられる。
また、外側の硬い部分を皮質骨、関節の周囲のふくれた部分を果といいますが、その部分の中味のスポンジ状の部分を海綿骨といいます。外側からの衝撃を吸収する役目をしています。