みらい在宅医療総合クリニック水戸

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廃用性萎縮

 廃用性萎縮とは英語では、disuseatrophyと言います。
 体の仕組みは上手くできたもので70才代の私の友人が心臓の冠状動脈拡張を内視鏡でやった時、「一週間動かないでベッドで寝ていたら歩けなくなった。参ったよ。すぐ歩けるようになったけれど」と言っていました。
 私は、整形外科医ですが、骨折治療で固定した後、関節が曲がらなくなるとか筋肉が細くなるのは一般の人にも良く知られていますが、宇宙飛行士が地球に帰った時、すぐに歩けないのも何ヶ月も宇宙の無重力状態にいると、かなり宇宙船内で筋力トレーニングをしてなかなか筋肉の萎縮や骨の脱灰や心臓機能の低下はなかなか防ぐことは難しいようです。これは医師の 間では良く知られていることです。又ホルモンを長期間ある一定量以上投与した場合は、そのホルモンの分泌腺の働きが弱くなり、急に止めると体に不都合なことが起こります。病気の治療のためにはしかたない部分はありますが、十分気をつけないと困ることは多々あります。
 私は子供の頃、友人等が野鳥を飼っていました。1年以上飼った鳥を “飼年” と言って他人に自慢したものでした。3年以上飼うと放しても逃げなくなる野鳥が多いようです。野鳥がエサをとり易い季節だと野生に帰れる確率は高いようですが、エサが少ない時は逃げなくなり、すぐに帰ってきてしまいます。すなわち野生では生きられなくなる訳です。人間も同じであまり長く入院していると社会復帰の可能性が低くなります。私は経験していないのでわかりませんが、食っちゃあ寝、食っちゃあ寝、何もしないで、よく嫌にならないで何も感じないでいられるなと思いますが、それを続けると、見方によれば “こんな楽なことはない” と考えるようになり、なかなかその状態から脱するのは難しくなります。
 「関節拘縮を起こさない為には屈曲伸展を一日3回曲げ伸ばしすれば大丈夫。筋萎縮を起こさない為には、最大筋収縮伸展を一日3回やれば大丈夫」と若いころリハビリの上司の先生に教わりましたが、これが簡単なようで諸々の条件があり結構難しい。皆それができるようであれば、リハビリテーション指導する医師はもちろん、PTもOTもいらなくなります。

※PT…理学療法士、OT…作業療法士

医療法人社団 医宝会
理事長  宝住 与一