みらい在宅医療総合クリニック水戸

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糖尿病

 糖尿病(diabetesmellitus)は、インシュリン発見以前は死の病気でした。色々な治療が試みられてきましたが、身体が溶けて尿に絶え間なく流れ出ていくというギリシャ語の病名の通り患者は痩せて昏睡に陥り死んでいきました。1921年カナダの整形外科医バンディングと医学生ベストによってインシュリンが発見され糖尿病の治療に福音がもたらされました。
 その発見でバンディングはノーベル賞を受けることになりましたが、ベストの功績が大きかったので、バンディングがノーベル賞委員会に申し入れて一緒にノーベル賞を受賞したとのことです。私が学生の時、生化学の教授がバンディングにインシュリンの話をすると機嫌が悪くなったと話していました。何となればベストは医学生で彼がインシュリン発見に大きく貢献したため、気分が悪くなったのだと思います。その教授に君たちもべストと同じように大発見をするチャンスがあるので、何か気がついた事がないかとよく聞かれました。
 また、昨年の日本医師会の設立記念大会の山中伸弥京都大学教授、この先生もたまたま整形外科医でした。多分ここ1、2年の内にノーベル賞をもらうと思いますが、その講演の題は「予想外の実験結果の20年」という題でしたが、非常に淡々と聞く人と研究者、皆に元気が出るような内容でした。田中耕一さんも実験の失敗を検証していて、ノーベル賞につながったことを示唆していますし、今回受賞の鈴木章先生、益川敏英先生等も皆、共通しているのは、必ずしも恵まれた環境になかった事と思います。
 前置きはこの位にして、私は糖尿病については、患者さんに次のように説明しています。 各人それぞれ生きていくためにはエネルギーが必要です。その為燃料を得るためにそれを燃やす。それぞれ各人に “ かまど ” があり燃えが悪くて煙がでる。その煙が糖と考えると分かりやすい。
  “ かまど ” の構造が悪くて燃えが悪い人は若年性糖尿病、その他の人はそれぞれ構造が少しずつ違っているので、糖尿病になる人となりにくい人がいる。日本人は40才を過ぎたら、6人に1人は糖尿病と言われています。また白人は、我々日本人より糖尿病になりにくいと言われています。それは体も大きいし、 “ かまど ” の容量が大きいせいかなと思います。そして燃料を燃やす空気にあたるのがインシュリンです。
 だから今までの治療は、 “ かまど ” にまきをくべた時、燃えが悪いと空気を送ると考えると、より燃料をくべすぎると燃えが悪くなり、煙が多くなるという訳です。だから糖尿病の治療に適当な食事、(diet)や運動が良いわけです。糖尿病の合併症、白内障なども水晶体に煤 が溜まったと考えれば分かりやすいし、腎障害もますます煤が溜まり、腎機能の再吸収や、ろ過機能が失われると考えると分かりやすいと思います。
 私は、代謝性疾患、糖尿病、通風などが治らない一番の最後の病気と思っていましたが、最近糖尿病に夢の新薬、画期的な薬が生まれたと知りました。インクレチン関連薬と言いますが、これはすい臓のラングハンス(インシュリンを分泌するところ)の失われた機能を活性化させるような薬のようですが、副作用等の事もあり、もう少し様子を見ないと分かりませんが、多分 “ かまど ” の煤や煙突の煤を掃除するようなものだと考えてもらえば良いと思います。この薬は、もう1年位前よりインクレチン関連薬は保険適用されてますが、まだ制限があり、この薬が副作用、その他の情報を良く分り、十分活用できるようになれば大部分の糖尿病の合併症が防げ、我々の健康寿命の延伸に寄与するものと思われます。

医療法人社団 医宝会
理事長  宝住 与一