みらい在宅医療総合クリニック水戸

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尊厳死を考える②

 先日、私の友人の整形外科 医A先生の奥さんが「主人が亡くなりました。家族で全部終わりました。生前主人が 大変お世話になったので」と言って、息子さんと奥さんが一緒に挨拶に来ました。
 一瞬、言葉に詰まりましたが「(植物状態になって) 何年でした。」「8年です。」「ご愁傷さまでした。本当に大変でしたね。」私が言った後、帰られました。
 4・5日前に、市整形外科医会で同世代の先生に「A先生は本当に悪性腫瘍だったのかな」と言ったら、「違うでしょう。悪性腫瘍ならこんなに生きられる筈がない。」と言って別れたその矢先でした。
 彼は8年前、脳の悪性腫瘍(がん)で自治医科大学脳外科で手術しました。その後、植物状態になり先日亡くなった訳ですが、その間、私も何度見舞いに行きましたが段々行きにくくなり、ここ数年は行っておりませんでした。回復の見込みのない病状の人の場合は、なんにも話が出来なくなり、見舞う方も大変苦痛で、殆どの人がなかなか行けなくなってしまうのではないかと思います。
 10年位前、私の友人の母親が脳卒中で倒れました。その時、私は言った覚えはないの ですが、「大変だが、元のように生きることは不可能で、助かればよいのですが、 亡くなるなら看病は長くても大変、短くても物足りない。3ヶ月がちょうど良いのだよな。」と私が言ったらしい。その友人が、母親が亡くなった後、私のところに来て「貴方は言ったことを覚えていないと思うけれど、3ヶ月で亡くなって丁度よかった。これ以上、長くても短くても大変だった。」とお礼を言われたことがありました。
 私が、このような事を考えだしたのは、一番最初はインターンの時、小児科で脳性麻痺の患者さんが植物状態で生まれ、数年の間入院している患者がおり母親が悲しそう に毎日看病していたのを見た 時でした。 次が、私が大学病 院に無給医として勤務してい た時で、高校生が交通事故で 植物状態になり、 若い母親が悲しそうに看病していました。その時、既に数年が経過していたと思います。
 私は、今回の私の友人の奥さんと息子さん、 豊島病院の子どもの母親、大学病院の高 校生の母親の人生のことを考 えてやらないといけないのではと考えてしまいます。
 看病した当人の方々は「これでよい」、「仕方がない」、「悔いはない」と思っているかもしれませんが、これからはこのようなケースがどんどん出てくるかと思うので、何らかの対策を考えてやらないと、いけないのではないかと思います。

医療法人社団 医宝会
理事長  宝住 与一